2023Venture Forth第163号自ら動き出す出藍の誉れ
10年ほど前、モーツァルトの生誕250年ということで、全国的に様々なイベントが行われたことがありました。
モーツァルトといえば、言わずと知れた「神童」です。
人生の異常に早い時期から年齢不相応の才能を発揮していたことから、このような名がつきました。
3歳でピアノを弾きはじめ、4歳で複雑な曲をいくつも記憶し、5歳で作曲を始め、7歳でヨーロッパ各地を演奏旅行、12歳でオペラを作曲しました。「生まれつきの天才」とさえ呼ばれます。
よく、「生まれつきの天才」とか「あの独特の響きは誰にも真似できない」のように彼を評する言葉を聞きます。
モーツァルトについて、皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。
そのモーツァルトの作品に『レクイエム』という曲があります。
私は大学生の頃に、その素晴らしさに魅了されました。
モーツァルトの曲の中でも、最高傑作の1つと評される有名な曲です。
1791年に作曲されました。
実はこの曲に、非常に良く似た曲があります。
それは、ミヒャエル・ハイドン作曲の『レクイエム』。
あの有名なハイドンの弟です。
こちらは、1771年に作曲されました。
これは、決して偶然ではありません。
実は、ハイドンとモーツァルトは子弟の関係にあり、モーツァルトはハイドンの作品を手本にしていたと言われています。
レクイエムは模倣、つまり真似によって生まれた作品なのだそうです。
木原武一著『天才の勉強術』にも、次のような記述があります。
モーツァルトがハイドンの真似をしていることはまぎれもない事実であるが、モーツァルトの『レクイエム』の方がはるかに深く人々の胸に迫り、忘れがたい印象を残すことも否定しがたい事実である。
その上で著者の木原氏は、「モーツァルトは『真似の天才』である」と言い切ります。
様々な作曲家の良いところを素直に取り入れ真似する力こそ、真に卓越した彼の才能なのだそうです。
「出藍(しゅつらん)のほまれ」という言葉があります。
「青は藍より出でて藍より青し」と言うように、手本を学び続ける中で、不意にそれを超える瞬間があることの意を指します。
モーツァルトはまさに、「出藍のほまれ」といえるでしょう。
第3クォーターの終わりごろから始まった会社活動は、さらにどんどんとその多様さに磨きがかかってきています。
新聞を発行して価値ある情報を広げようとする人。
ニュースを放送してクラスに笑顔を届けようとする人。
バイオリンの演奏を通じてクラスの皆に癒しをプレゼントする人。
他にも、「ゴミゼロイベント」を企画する会社や、毎日書く振り返りのスピードを磨こうと取り組んでいる会社、さらにトイレの状態をきれいに保つために陰ながら取り組みを続けている会社もあります。
これらについて、私は何一つ指示をしていません。
自分たちで考え、見つけた仕事に取り組み始めているのです。
そして、能登半島沖地震のためにも、クラスでは続々と動き出す子たちが出始めています。
先日、「竹」を使ったアイディアが出てきたことをVentureFourthでもお伝えしました。
その元々はどこから生まれたのかを子どもたちに問うと、
「うんこです!」
との答え。
以前、社会科の授業の中で、北海道上士幌町の事例を扱ったことがありました。
上士幌町は、町民よりも牛の頭数が多い街です。
それほど、酪農が盛んな町なんですね。
その上士幌町で長らく住民を悩ませてきたのが、牛糞の悪臭です。
凄まじい量の牛糞、牛のうんこが放つ強烈な悪臭が町全体を覆っており、ひどいときには外出するだけで服に匂いがついていたそう。
その悩みの種の牛糞を活用した方々がいます。
何をしたか。
まず、牛は草を食べる動物です。
そして、草を食べるとうんこ(牛糞)が出ます。
この牛糞は、発酵させるとガスが出ます。
発酵させた後のカスは「液肥」といって、匂いが何十分の1に抑えられるうえに優れた肥料になります。
そして、発行によって出てきたガスは燃えます。
燃やす力は発電に応用が可能です。
そうして匂いを抑え、肥料を生み出し、電気も生み出す。
こうした三方良しのアイディアを生み出したことによって、上士幌町は牛糞をもとに町民全てに必要な電力を生み出すことに成功しました。
牛のうんこが、町民全員の電気を作り出したのです。
子どもたちは、この事例を見た時に大いに驚いていました。
その上で、私は問うたのです。
瀬戸市でも同じようなことはできないか、と。
多くありすぎて困っているモノ。
住民の悩みの種になっているモノ。
そうしたものを発想の転換で価値に変換することはできないかを考えたのです。
子どもたちは、色んなアイディアを思いつきました。
焼き物の割れたものを燃やす廃棄物発電。
ろくろの回す力を活用するろくろ発電。
焼き物を作る時の熱や煙の力でタービンを回す焼き物発電。
もちろん、焼き物以外にも、たくさん生えている草や竹を使うアイディアや、せともの祭りに来た人だかりを活用するアイディアなどなど、色んな考えが次々と飛び出しました。
その時は、「エネルギー自給率の低さ」を補うための学習だったので、「エネルギーへの転換」がメインでしたがそれを子どもたちは覚えていたのです。
そして、竹を使って製品を作れないかというアイディアが出てきました。
他にも、使い終わった後の鉛筆や消しゴムのカスなど、普段我々がゴミとして捨ててしまっているものについても何か活用の道はないかと考え始めています。
そうしてついに、この竹のアイディアは大きく動き始めました。
事務の足立さんが力を貸してくださり、近くの竹林を所有している地主さんに連絡を取ってくれたのです。
昨日、その地主さんに挨拶をしてきました。
すると、見事に快諾をいただいたのです。
子どもたちのアイディアに感激すると共に、「いくらでも使ってください。応援しています。」との力強いエールもいただきました。
来週にも、竹細工の得意な山本先生の力を借りて竹を切りに行き、学活や道徳の時間を活用して竹製品を作り出そうと考えています。
その売り上げが被災地石川に届いたら…
そう考えるだけで、ワクワクしますね。
すでに教室で子供たちと話している時に、何度も歓声が上がりました。
さらに、です。
今朝、今野さんが私の所にやってきて言いました。
「先生、CANVAでこれを作ってきたんです。」と。
何かと思ってみると、それは石川のレストランを救うためのポスターでした。
現地石川で起きている問題の一つに、「自粛ムードによって人々が外食に行かなくなっている」ということがあります。
せっかく被災から立ち直ってお店を再開しても、お客さんが来なければお店はつぶれてしまいます。
現地の飲食店を経営される方々は、今この大きな問題に悩まされているわけです。
自粛ムードが悪いわけではありませんが、それによって立ち上がろう立ち直ろうとする人たちの希望が砕けてしまうのは悲劇です。
それを今野さんは救いたいと思ったそうです。
そのポスターを、ぜひご覧ください。
このアイディアは、情報担当の横尾先生も絶賛しておられました。
今、どうにかこのポスターを多くの人に届けられないかと、次なる動きに映り始めているところです。
そこで、お家の方々にもお願いです。
北陸地方や、あるいはそこに行くことが可能な人に、このポスターの情報をシェアできる方がいれば、ぜひお願いしたいのです。
もちろん、何かの折にご自身が行く場合に使ってもらっても構いません。
石川の皆さんのために自ら動き出したその一歩を、みんなで応援してあげたいのです。
私は以前、「学ぶことで人は幸せになれる」という話をしました。
色んな知識が増えたり、技が磨かれたりすると、その知や技を使って誰かを助けたり喜ばせたりすることができる。
そうやって誰かを喜ばせることが「仕事」である。
多くの人を助けたり喜ばせている人のもとには、たくさんの幸せが手に入る。
だから、我々は学ぶのだ。という話をしたのでした。
竹のアイディアもポスター作製の行動も、まさにその学びの本質を体現する動きです。
もはや、私の想定など全く及ばない次元で子供たちは動き始めています。
まさに、出藍の誉れそのものです。
ともすれば自分のことばかり考えがちなこの時代や社会において、こんな風に誰かのことを想い、学びを行動に移せるあなたたちの姿は宝です。
未来の希望であり、私にとっての誇りです。
学びの本質を自然と体現しているみんなの姿を、これからも応援し続けたいと思います。
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